topiko! MAGAZINE
2020年12月取材
北海道ニセコのじゃがいもは、寒いからこそ甘くなる。
ニセコ若山農産
見てください、うず高く積まれたじゃがいもたち!北海道の中でも、ニセコ町で穫れるじゃがいもは特においしいと有名です。なぜ、ニセコのじゃがいもが特においしくなるのでしょう?
今日はその理由を探りに、ニセコ町近藤地区の『若山農産』へお邪魔しました。
若山農産で生産しているじゃがいもは、『男しゃく』と『きたかむい』の2種類です。 右側が男しゃく。じゃがいもといえばこれを思い出す人も多いですよね。
これぞじゃがいも、というほこほこの食感は、ポテトサラダやコロッケにぴったり。北海道生まれの人なら、ゆでたての男しゃくをつぶして片栗粉と混ぜ、フライパンで焼いた『いももち』を作ったことがある人も多いはず。
左側が『きたかむい』です。男しゃくに比べて丸みがあり、芽が浅いのが見分けるポイント。火を通すと、男しゃくよりもキメが細かく、つるりとした食感をしています。
きたかむいは北海道で交配された新しい品種で、まだ珍しく生産量も少なめ。でも冬の間にグッと甘みを増しておいしくなる!と注目度が上がっている品種でもあります。
じゃがいもが低温で貯蔵するうちに甘くなるのは、でんぷんを分解して糖度を高め、凍らないようにするためです。
新じゃがのみずみずしさから始まって、冬の初めには少しずつ水分が飛んでほっこりとした食感に変わっていき、寒い冬を乗り越える間にグッと甘くなる。保存する間にどんどん味わいが変わるというおもしろさが、じゃがいもにはあるのです。
この写真では、羊蹄山の右側に開けたエリアが北海道ニセコ町の位置。若山農産の畑がある近藤地区は、ニセコ町の中でも特に羊蹄山に近い場所にあります。
羊蹄山とおいしいじゃがいもは、切っても切り離せない関係にあります。
4万年前から活発に活動を続けた羊蹄山は、大量の火山灰と溶岩を積もらせてきました。
そのおかげで周囲は適度に水はけの良い土となり、じゃがいも栽培に向いた土壌ができたのです。
今日は若山農産の代表、和也さんにお話を聞いています。
この場所で農業を始めたのは和也さんのおじいさまで、代々じゃがいものほか、とうもろこし・ブロッコリー・豆類を生産しています。
ところで、農家さんおすすめのじゃがいも料理ってどんなものなのでしょう?
生粋の農家育ちである和也さんにおすすめを聞くと、間髪入れずに返ってきました!
「正月を越したきたかむいで作る、ジャーマンポテトですね!」
きたかむいならではの、年明けまで保存することで生まれる甘みと、炒めたときの香ばしさが絶妙なのだそうです。
またお母さまの作る思い出の料理として、男しゃくといんげんの和風の煮物を挙げてくださいました。ほこほことした男しゃくのまわりに、しょうゆ味の煮汁がとろりとからんでおいしいとのこと。
(さっそく、帰ってから私たちも作ってみました。1日めは肉じゃが。圧力鍋を使えば5分ほどでできてしまう手軽さなのに、じゃがいもはほこっと火が通り、甘辛い和風の味つけと抜群の相性なのです。この和風の味つけがおいしくて、次の日は手羽先とじゃがいもを煮つけてみました。)
美しい羊蹄山がもたらした、火山灰の大地。
そして、冬の厳しい寒さと、大地を真っ白に覆う雪。厳しい冬があるからこそ、その中でじゃがいもは甘く味わいを増し、雪は次の春に大地を潤して新たな実りを支えます。
火山と雪という2つの条件によって、おいしく育てられた北海道ニセコのじゃがいも。
これから全国の皆さまのもとへ渡っていく時を待っています。
(おまけ)
冬の間、農家さんたちは翌春の準備を進めています。
この日は来年まくための、あずきの種豆の選別をしていました。混ざっている草や石、生育不良の豆などをひとつひとつ取り除きます。
text & photo:NISEKO topiko! “c5-t”